黒字倒産はなぜ起こるのか
会社が潰れるのは、事業資金が枯渇した時です。
会社が成長するのは、事業資金が適切に投資された時です。
したがって、事業資金の最大化が会社の永続・発展の方途ということができます。
また、会社の事業資金は、税引後利益から生じます。
したがって、利益の最大化が会社の永続・発展の方途ということもできます。
しかしながら、倒産する会社の中には、黒字の会社も少なからず含まれています。
また、倒産にまでは至らなくても、利益は出ているのに一向に資金繰りが楽にならないと感じている経営者は少なくないのではないでしょうか。
こうした、一見すると矛盾した事象は、「損益」と「収支」との違いによりもたらされます。
経営に「収支」という視点を加える
損益とは、ある期間にどれだけの利益を出したかをいいます。
これに対し、収支とは、ある期間にどれだけの資金の出入りがあったかをいいます。
例えば、4月に1,000円で現金仕入れした商品を3,000円で掛販売し、掛代金は5月に回収するという取引があったとします。
これを損益という観点から見れば、
「4月の利益は2,000円」
ということになりますが、
これを収支という観点から見れば、
「4月の収支はマイナス1,000円」
ということになります。
一方で、4月に1,000円で掛け仕入れした商品を3,000円で現金販売し、掛代金は5月に支払うという取引があったとします。
これを損益という観点から見れば、
「4月の利益は2,000円」
ということになりますが、
これを収支という観点から見れば、
「4月の収支はプラス3,000円」
ということになります。
このように、同じ利益であっても、取引方法によって収支は異なるのです。
これが、黒字倒産や、利益が出ても資金繰りが楽にならないという事象が生まれるメカニズムです。
長期的に見れば利益の最大化は事業資金の最大化を意味します。
しかしながら、ある短期間の収支を見れば、利益の額と事業資金の額とに必ずしも相関関係はないのです。
損益改善、すなわち利益を出す方法を追求することは重要ですが、会社の永続・発展のためには、これに加えて収支改善、すなわち事業資金を最大化する方法も併せて追求する必要があるのです。