金融庁による西武信用金庫への立ち入り検査
不正融資問題で、西武信用金庫に金融庁が立ち入り検査を行う方針が固まりました。
金融庁は、西武信用金庫が、顧客の預金額を水増しし、多額の融資を受けさせるという不動産業者の不正なスキームを見抜けずに、当該顧客に融資を行った可能性があるとみています。
なお、不動産融資に係る不正融資については、本件に先立ってスルガ銀行が金融庁の立ち入り検査を受けています。
この検査の結果、スルガ銀行は、
- 不動産会社により提示された不動産価格が、本来の数値よりも割り増しされた不正なものであることを認識しながら、当該価格に基づく多額の融資を実行していた
- 債務者の預金通帳の改ざん、債務者の預金通帳への自己資金の振込等の不正を認識しながら、当該資料に基づく多額の融資を実行していた
等により、行政処分を受けることとなりました。
西武信用金庫における不正の有無や態様については、立ち入り検査の結果を待つばかりですが、報道によれば、過去にスルガ銀行から改ざん書類に基づき不正融資を引き出していた都内不動産業者が、西武信用金庫等からも多額の不正融資を引き出していた資料が見つかったとされており、類似の不正への加担、あるいは不正の見落としがあった可能性は否定できないでしょう。
西武信用金庫は、国内屈指の預貸率を誇る信用金庫ですが、本件及びこれに伴う金融庁の立ち入り検査が、かかる状況に及ぼす影響は小さくないものと考えます。
金融機関の性格及び体質と不正融資
これら事案は、金融機関の性格や体質を、不正に利用したものです
例えば、上記②については、創業融資における禁じ手である「見せ金」をさらに悪質にしたスキームであり、「資金を潤沢に保有する会社に融資をしたい」という金融機関の性格を逆手にとったものであるといえます。
また、スルガ銀行においては、営業店が取引継続を企図して不正業者に新たなスキームを提案する等、積極的に不正に加担していたとされていますが、これは、「ノルマ達成に追われる」という金融機関の体質がもたらした歪みであるといえます。
不正融資問題からみた正しい融資戦略
たしかに、金融機関には、独特の性格や体質があります。
融資を受けたい会社にとって、これを利用することは、効果的かつ重要な戦略となります。
ただし、その利用の態様が不正なものであってはなりません。
私は、「融資は1日にして成らず」であると考えています。
ただちに、望みどおりの融資を受けられるような手法はありません。
今日の不正融資問題の続発は、逆説的にこのことを証明しているといえるでしょう。
金融機関の性格や体質の正しい理解に基づき、時間をかけて正しく関係を築き、正しく交渉を行うことこそが、融資戦略の唯一解なのです。