融資とは
融資とは、銀行や信用金庫・信用組合等の金融機関が、法人または個人に、利息を対価として金銭を貸し出すことをいいます。
事業を行なうには、商品の仕入れや人件費等の経費支払い、車両や設備の購入等、多くの資金が必要となります。
預金や売上代金等の自己資金で、これらの資金がまかなえれば問題はないのですが、急な資金需要や、季節の変動による売上・仕入れの増減等により、自己資金の額は大きく変動するのが通常です。
このため、多くの会社は、自己資金のほか、金融機関から資金を借り入れて(=融資を受けて)、これらの資金をまかなっています。
融資のメリット
金融機関から融資を受けることには、次のメリットがあります。
1. 会社の倒産を防げる
現預金がなくなると、会社は、税金や社会保険料、仕入れ代金や従業員への給与が払えなくなってしまいます。
つまり、現預金がなくなると、会社は倒産してしまうのです。
自己資金に加えて、金融機関から融資を受けて現預金を潤沢に保有しておけば、会社の倒産までの期間を繰り延べることができますし、その期間で経営の立て直しを図ることができます。
2. 会社の成長が早くなる
会社の成長には、人材採用や設備購入といった経営資源への投資が必要となります。
この投資は、長年かけて利益の中から蓄積した自己資金で行うこともできますが、その分会社の成長は遅れてしまうこととなります。
一方で、融資により現預金を調達すれば、すぐに経営資源への投資が可能となりますので、その分会社の成長を早めることができます。
3. 短期間で現預金を増やせる
会社の現預金を増やすには、主に、
- 利益から蓄積する
- 融資を受けて調達する
の2つのパターンがありますが、利益から蓄積するより、融資を受けて調達する方が、容易に必要な現預金を増やすことができます。
たとえば、現預金を1000万円増やす場合について、比較してみます。
現預金を利益から蓄積しようとする場合
会社の現預金は、非常に大まかにいうと、利益の分だけ増加します。
一般に、この国の会社の経常利益率の平均は5%が平均値とされています。
つまり、会社の現預金を1000万円増やすためには、
1000万円÷5% |
で、2億円の売上があればよいこととなります。
現預金を融資により調達しようとする場合
一方で、1000万円を年利2%の融資で調達する場合、年間の利息は、
1000万円×2% |
で、20万円となります。
上記の例と同じ経常利益率を用いると、この20万円をまかなうためには、
20万円÷5% |
で、400万円の売上があればよいこととなります。
4. 一度融資を受けると次回の融資が受けやすくなる
お金を借りて返すことにより、その会社の信用は高まっていきます。
このため、一度融資を受けて返済をした実績のある会社は、次回の融資を受けやすくなります。
また、さらにこの実績を積んでいくと、低金利で、または担保や保証人なしで融資を受けられるようになることもあります。
融資のデメリット
金融機関から融資を受けることには、次のデメリットがあります。
1. 金利の支払いが必要
融資を受けると、元本の返済のほか、金融機関に金利を支払う必要が生じます。
金利は、金融機関や会社の状況、融資金額等により異なりますが、概ね2〜3%程度となることが通常です。
2. 担保や代表者の連帯保証が必要
ほとんどの場合、融資を受ける際には、担保や代表者の連帯保証が求められます。
担保を提供している場合において、会社が返済不能に陥ると、担保は換価されてしまいます。
また、代表者が連帯保証人となっている場合において、会社が返済不能に陥ると、代表者が会社に代わって返済を続けなければなりません。
3. 申し込んですぐに実行とはならない
金融機関の融資は、審査を経て実行されます。
申し込みをして、実際に融資が実行されるまでの期間は、その金融機関で融資を受けるのが初めてかどうかや、会社の業況等によって異なりますが、概ね1月程度はかかると考えておくとよいでしょう。
融資はどこの金融機関に申し込めばよいのか
金融機関の種類で決める
金融機関には、大きく分けて、メガバンク(都市銀行)、地方銀行、信用金庫・信用組合の3種類がありますが、それぞれターゲットとしている会社や融資の規模が異なります。
次に、それぞれの金融機関の概要を列挙しますが、基本的に融資を申し込む金融機関は、会社の売上規模に応じて、
信用金庫・信用組合→地方銀行→メガバンク |
と変えていくとよいでしょう。
メガバンク
メガバンクとは、三井住友銀行・三菱UFJ銀行・みずほ銀行の3行を指します。
これらメガバンクは、首都圏や、関西圏、地方都市では県庁所在地等を中心に、全国展開されています。
規模が大きく、資金が豊富であるため、1億円を超えるような融資先を探しており、優良企業に対してはプロパー・低利息・迅速・多額という好条件の融資を積極的に行っている反面、利益の小さい少額融資や信用の乏しい零細企業への融資には消極的です。
地方銀行
地方銀行は、第一地方銀行と第二地方銀行に大別され、その名のとおり、本店所在地の都道府県を中心に、地域に根ざして展開しています。
融資の申し込み先として、第一地方銀行と第二地方銀行のいずれを選択すべきかについてですが、たとえば、両者が合併した場合を考えれば、規模が大きく合併法人となりやすい第一地方銀行が有利といえます。
一方で、第二地方銀行は、地方企業のメインバンクとしての地位を確立している第一地方銀行から優良企業を奪いたいと考えています。
このため、うまく利用すれば、第二地方銀行からは、低金利等、第一地方銀行より好条件での融資を獲得することができるでしょう。
なお、いずれの地方銀行も、融資可能な金額はメガバンクより小さくなりますが、その分、少額融資についても積極的に対応してくれます。
ただし、メガバンクほどの規模や資金がないことから、保証協会付融資がメインとなっており、プロパー融資の場合でも標準金利がメガバンクより0.5%程度高い傾向にあります。
信用金庫・信用組合
信用金庫と信用組合は、どちらも、非営利の協同組織金融機関で、融資を受けられるのは会員(信用組合の場合は組合員。以下同じ。)のみとなっています。
この会員となる要件に、従業員数・資本金額の上限が定められているため、一定規模以上の会社については、信用金庫・信用組合から融資を受けることはできません。
したがって、零細企業や個人事業主が主な取引先となっています。
また、信用金庫・信用組合は、地方銀行よりもさらに地域密着型であり、対応エリアが狭いことから、担当者が定期的に会社を訪問してくれるなど、より会社に寄り添ったサービスが受けられることが特徴です。
都市圏の一部の信用金庫を除き、地方銀行と同様に、やはりメガバンクほどの規模や資金がないことから、あまり高額の融資は期待できず、また、はじめは保証協会付融資となることが多いですが、信用金庫は創業間もない企業などにとっては最も利用しやすい金融機関であるといえます。
なお、プロパー融資の場合の標準金利はメガバンクより1%程度、地方銀行より0.5%程度高い傾向にあります。
預貸率で決める
融資を申し込む際には、預貸率の高い金融機関を選ぶことが大切です。
金融機関は、預金者から預かったお金を融資し、融資先から利息を受け取ることで成り立っています。
この、預かったお金の金額に占める、貸付けているお金の割合を、預貸率といいます。
つまり、
預貸率が高い金融機関=融資に熱心な金融機関 |
ということになります。
以下に東京都の全信用金庫の預貸率、神奈川県の全地銀・全信用金庫の預貸率を掲げますので、融資を申し込む金融機関を選ぶ際にご活用ください。
東京都全信用金庫の預貸率ランキング
1位 西武信用金庫 81.51% (各信用金庫ディスクロージャー誌に基づき、弊社が作成したもの) |
神奈川県全地銀・全信用金庫ランキング 1位 神奈川銀行 82.47% (各地銀・信金のディスクロージャー誌に基づき、弊社が作成したもの) |
まとめ
いかがでしたでしょうか。
金融機関の主たる収入は融資をすることで受け取る利息収入です。
金融機関で融資を受けることに尻込みをしてしまう方も少なくありませんが、会社が、融資を受けなければ生き残ることができないのと同様に、金融機関も、融資をしなければ生き残ることはできないのです。
もし、会社に資金が必要な時は、「金融機関から融資を受ける」という選択肢をも念頭においていただきたいと思います。
金融機関で融資を受けるための必要書類、交渉術については、
をご参照ください。