定量評価とは、銀行が、会社から提出を受けた決算書の数値をシステムに登録して、
①安全性項目
②収益性項目
③成長性項目
④返済能力
の各項目(定量要因)につき行う評点をいいます。
上記の①〜④は、それぞれ3〜4項目から成り立っています。
下の表は、ある銀行で行われている定量評価です。
結果 | 配点 | 点数 | |
①安全性項目 | |||
自己資本比率 | 45% | 10 | 8 |
ギアリング比率 | 73% | 10 | 8 |
固定長期適合率 | 15% | 7 | 7 |
流動比率 | 167% | 7 | 7 |
②収益性項目 | |||
売上高経常利益率 | −103% | 5 | 0 |
総資本経常利益率 | 0% | 5 | 0 |
収益フロー | 0期 | 5 | 0 |
③成長性項目 | |||
経常利益増加率 | 444% | 5 | 0 |
自己資本額 | 0 | 15 | 1 |
売上高 | 3,119 | 5 | 0 |
④返済能力 | |||
債務償還年数 | 0年 | 20 | 0 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ | −285倍 | 15 | 0 |
キャッシュフロー額 | −5,522 | 20 | 0 |
定量評価計 | 129 | 31 |
この表を一見するとわかるように、まず格付において重要なのは、定量評価は、項目により、配点が異なるということです。
例えば、④の3項目への配点が際立って高いことが見て取れます。
したがって、まずは④の改善に取り組むことが、格付向上の戦略となります。
また、各項目の意味を理解することも重要です。
実は、上記3項目の計算式には、共通して営業利益が含まれています。
つまり、営業利益が大きくなるように決算書を作成するだけで、格付は向上し、融資を受けやすくなるのです。
①安全性項目
融資の5原則の、安全性の原則に対応する項目です。
すなわち、会社の倒産のおそれの有無を測定するための項目です。
安全性項目は、
A. 自己資本比率 B. ギアリング比率 C. 固定長期適合率 D. 流動比率 |
の各項目から成り立っています。
A. 自己資本比率
自己資本の総資本に占める大きさを示すもので、
純資産の部合計÷資産の部合計 |
の式で求めます。
B. ギアリング比率
借入金の自己資本に占める大きさを示すもので、
(短期借入金+長期借入金)÷純資産の部合計 |
の式で求めます。
C. 固定長期適合率
固定資産を長期資金で賄えているかどうかを示すもので、
固定資産合計÷(固定負債+純資産の部合計) |
の式で求めます。
D. 流動比率
流動負債を流動資産で返済できるかを示すもので、
流動資産合計÷流動負債合計 |
の式で求めます。
②収益性項目
融資の5原則の、収益性の原則に対応する項目です。
すなわち、会社が収益を上げ、かつ、利息をつけて返済を行い、銀行の収益に貢献してくれるかを測定するための項目です。
収益性項目は、
E . 売上高経常利益率 F . 総資本経常利益率 G . 収益フロー |
の各項目から成り立っています。
E. 売上高経常利益率
会社の経常的な収益性の高さを示すもので、
経常利益÷当期売上高 |
の式で求めます。
F. 総資本経常利益率
保有する資産で効率的な経営ができているかを示すもので、
経常利益÷負債・資本合計 |
の式で求めます。
G. 収益フロー
黒字の継続年数です。
③成長性項目
融資の5原則の、成長性の原則に対応する項目です。
すなわち、会社が成長し、かつ、利息をつけて返済を行い、銀行の収益に貢献してくれるかを測定するための項目です。
成長性項目は、
H. 経常利益増加率 I. 自己資本額 J. 売上高 |
の各項目から成り立っています。
H. 経常利益増加率
前期比で経常利益がどれだけ増加したかを示すもので、
(当期経常利益−前期経常利益)÷前期経常利益 |
の式で求めます。
I. 自己資本額
当期の自己資本額です。
なお、長期間、返済の予定のない役員借入金や、資本性ローンによる借入金も自己資本額に含まれます。
J. 売上高
当期の売上高です。
④返済能力
会社が、融資する資金を利息とともに返済していく能力を測定するための項目です。
返済能力は、
K. 債務償還年数 L. インタレスト・カバレッジ・レシオ M. キャッシュフロー額 |
の各項目から成り立っています。
K. 債務償還年数
借入金を何年で返済できるかを示すもので、
(短期借入金+長期借入金)÷(減価償却費+営業利益) |
の式で求めます。
L. インタレスト・カバレッジ・レシオ
金利支払能力を示すもので、
(営業利益+受取利息配当金)÷支払利息 |
の式で求めます。
M. キャッシュフロー額
キャッシュフローのおよその規模を示すもので、
営業利益+減価償却費 |
の式で求めます。
定量評価のまとめと改善方法
下の表は、定量評価の各項目の概要とその改善方法を簡単にまとめたものです。
こちらを参考に、融資審査が有利に運ぶよう、定量評価の改善を図ってください。
定量要因 | 補足説明 | 改善方法 | |||||||||
自己資本比率 | 自己資本の総資本に占める大きさを示す | 自己資本↑、総資本↓ | |||||||||
ギアリング比率 | 借入金の自己資本に占める大きさを示す | 短期借入金↓、長期借入金↓、自己資本↑ | |||||||||
固定長期適合率 | 固定資産を長期資金で賄えているかどうかを示す | 固定資産→流動資産、流動負債→固定負債 | |||||||||
流動比率 | 流動負債を流動資産で返済できるかどうかを示す | 固定資産→流動資産、流動負債→固定負債 | |||||||||
売上高経常利益率 | 会社の経常的な収益性の高さを示す | 営業利益↑、受取利息配当金↑、雑収入↑、支払利息↓ | |||||||||
総資本経常利益率 | 保有する資産で効率的な経営ができているかを示す | 資産↓、営業利益↑、受取利息配当金↑、雑収入↑、支払利息↓ | |||||||||
収益フロー | 黒字が何期連続しているか | ||||||||||
経常利益増加率 | 前期比で経常利益がどれだけ増加したかを示す | 営業利益↑、受取利息配当金↑、雑収入↑、支払利息↓ | |||||||||
自己資本額 | 当期の自己資本額 | ||||||||||
売上高 | 当期の売上高 | ||||||||||
債務償還年数 | 借入金を何年で返せるかを示す | 短期借入金↓、長期借入金↓、社債↓、営業利益↑、減価償却費↑ | |||||||||
インタレスト・カバレッジ・レシオ | 金利支払能カを示す | 営業利益↑、受取利息配当金↑、支払利息↓ | |||||||||
キャッシュフロー額 | キャッシュフローのおよその規模を示す | 営業利益↑、減価償却費↑ |