定性評価とは、銀行の担当者が、決算書に表れない、
①業歴(創業後何年の会社か)
②市場動向(成長期、衰退期等、どのフェーズにあるか)
③景気感応度(景気の影響が高いか低いか)
④市場規模(何円規模の市場か)
⑤競合状態(市場の中での競合状態はどうか)
⑥経営者・経営状態(経営者の資質や経営状態が良好か)
⑦株主(上場か非上場か、安定しているかしていないか)
⑧営業基盤(強固か脆弱か)
⑨競争力(強いか弱いか)
⑩シェア(大きいか小さいか)
等の各項目(定性要因)につき行う評点をいいます。
定性評価は、定量評価と異なり、客観的な数値化が困難であり、その評価に時間的・金銭的コストを要することから、融資審査上、定量評価と比して軽視されがちな傾向がありますが、対策を怠るべきではありません。
次の2つを参考に、少しでも格付を上げられるよう、しっかりと対策を行いましょう。
担当者と良好な関係を築く
定性評価は、システムが決算書に基づき自動で行う定量評価とは異なり、銀行の担当者が主観で行うものです。
本来は、定量評価同様、定量評価も客観的に行われるべきものですが、担当者も人間ですので、自身にとって好印象の会社とそうでない会社とで、評価に差がついてしまうのはやむを得ないことです。
日頃から、担当者と良好な関係を築くことを意識してコミュニケーションをとっていくことが大切です。
たとえば、試算表が完成し次第、銀行の担当者に提出し、積極的に情報開示を行っていくことも有効です。
そもそも、証書貸付を受ける際に締結する金銭消費貸借契約書には、
甲(会社)は、貸借対照表、損益計算書等の甲の財務状況を示す書類の写しを、定期的に乙(銀行)に提出するものとします。
といった条項が含まれているのが一般的なのですが、税理士が試算表をなかなか作ってくれない、多忙で手が回らない等の理由で提出をしていない会社がほとんどです。
つまり、契約に則って情報開示を行うだけで、担当者の覚えが良くなることが期待できるのです。
銀行に自社の属する業界の動向や特性を伝える
経営者の方、殊に中小企業の経営者の方の間では、銀行の職員は皆、経営のプロフェッショナルであると考えている方が多いように見受けられます。
経営者の方がご自身の会社の属する業界のプロフェッショナルであるのと同様に、銀行の職員はたしかに金融のプロフェッショナルでありますが、決してすべての業界に精通した経営のプロフェッショナルではありません。
いかに、自社の属する業界の動向が明るいものであっても、銀行の担当者にとって、それは自身の担当する数多の会社の属するこれまた数多の業界の1つの動向に過ぎません。
したがって、銀行の担当者任せにするのではなく、自身で、積極的にこれらの情報を提供していく必要があります。
平成28年4月に公表されたローカルベンチマークは、事業性評価の入り口となることが期待されるものですが、これを基礎として銀行の担当者と密にコミュニケーションを図っていくことは、定性評価への有効な対策ともなっていくでしょう。