資金調達の現場レポート① 債務超過の会社の追加融資

本案件の概要

下記の案件につき、社長と信用金庫担当者との面談に同席することとなりました。

  • 資金使途  事業拡大に伴う増加運転資金。
  • 会社概要  創業後3期目。写真撮影事業。
  • 融資申込先 都内信用金庫。
  • その他   債務超過の状態。日本政策金融公庫及び今回申込を行う信用金庫からの借入残高あり。当該信用金庫については2ヶ月前に借入を行なったばかり。

 

本案件のポイント

この会社は、2ヶ月前に信用保証協会付融資を受けたものの、実行額は申込額の半額に減額されてしまったとのことでした。

今回の申込額は、前回申込額の3倍強の金額です。

加えて、一般に、追加融資は、前回融資と比して困難となりますので、前回融資で減額となった原因を踏まえ、充分な対策を講じて申し込みに臨む必要がありました。

そこで、提出済みの2期分の決算書を確認しましたが、まず目に留まったのは、債務超過に陥っていることでした。

 

この会社は、3回にわたって提供するサービスの料金を、一括前払いで受け取るという事業形態であり、契約書において中途解約禁止条項がありません。

現に、中途解約による返金が年に複数回生じており、その都度、未提供のサービスに相当する金額の料金の返金を行なっています。

 

このことから、この会社は、料金の受け取り時は、

  • 普通預金〇〇円(3回分)/前受金〇〇円(3回分)

として処理し、サービスを提供するごとに

  • 前受金〇〇円(1回分)/売上〇〇円(1回分)

と、売上に振り替える処理を行っています。

したがって、3回分の料金の入金により現預金は着々と増加していますが、対応するサービスの提供は事業年度をまたいで行われるため、決算書上では、そのほとんどが売上ではなく前受金(負債)として計上される結果、利益が小さくなり、債務超過に陥ってしまっています。

 

銀行や信用保証協会は、決算書の分析は行いますが、その決算書の背景となった収益の計上基準等にまでは目が届かない場合があります。

前回融資は、上記のような会社の収益の認識基準等が信用金庫または信用保証協会にうまく伝わらず、債務超過という決算書上の事実をもって、融資金額の減額との結論に至ったものと考えられます。

 

本案件の攻め口

上記により、

  • ① 料金が原則前受であるという構造により、設立から現在まで常に現預金が潤沢にある状態を維持しており、今後も返済能力に問題が生ずる可能性が著しく低いことを説明する
  • ② 受注件数と中途解約件数とをそれぞれ信用金庫に提示し、後者の前者に占める割合が極めて僅少であることを説明する
  • ③ ②に基づき、前受金(負債)として計上されている残高は、ほぼ売上と同視して差し支えのないものであることを説明する
  • ④ ③に基づき、1期目も2期目も実質的には大幅に黒字であり、結果、実質資産超過とみて差し支えないものであることを説明する
  • ⑤ ①〜④を債務者区分において考慮してほしいことを説明する

こととしました。

 

本案件の結果

満額可決

(信用保証協会付きの証書貸付

 

本案件のまとめ

常日頃感じていることではありますが、やはり今回も感じたのは、融資審査は、銀行の担当者の手腕に大きく左右されるということです。

債務超過という不利な案件であったこともあり、当初は1時間程度の面談を要するものと予想していましたが、今回の担当者は30分も経たずに会社の実態を理解し、適切かつ的確に評価をしてくださりました。

 

従来の決算書偏重の融資に代わるものとして、今日では、金融庁主導で「金融機関と会社との対話による融資(=リレーションシップバンキング)」が推進されています。

優秀な担当者と出会い、良好な関係を築くことの大切さを再認識した案件でした。

 

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