リスケジュール① 債務者区分への影響

銀行から融資を受けている会社が、経営悪化等により当初の条件どおりの返済が困難となった場合には、一般に、リスケジュール(=元本返済猶予)を受けることとなります

リスケジュールを受けたい会社にとって最大の懸念事項は、リスケジュールは銀行融資や取引先にどのような影響を及ぼすのかということでしょう。

本記事では、リスケジュールの債務者区分への影響をご紹介します。

リスケジュールと債務者区分

債務者区分において、要管理先以下に区分された会社は、銀行から融資を受けることが困難となります。

まず、大前提として、銀行にとっても融資先の債務者区分は下げたくないということを理解しましょう。

融資先の債務者区分が下がると、債権に対する貸倒引当率が上がるためです。

さて、要管理先は、要注意先の債務者のうち、当該債務者の債権の全部または一部が要管理債権、すなわち3ヶ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権である債務者をいいます。

リスケジュール、すなわち元本返済猶予を受けた借入金は、銀行の側でこの貸出条件緩和債権に当たる場合が多いことから、

リスケジュールを受けると、新規融資を受けることができない

といわれます。

しかし、これは厳密にいえば誤りです。

①融資先の信用リスクが下がる
②融資先から実抜計画または合実計画が提出される

ことで、銀行は、リスケジュールを行った債権を、貸出条件緩和債権としないことが認められているのです。

①融資先の信用リスクが下がる

貸出条件緩和債権とは、銀行法施行規則において、

債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取決めを行った貸出金

と定義されています。

先述のとおり、「リスケジュールを受けると、融資が受けられないと一般にいわれているのは、リスケジュールはまさにこの「元本の返済猶予」に当たり、リスケジュールを受けた借入金が銀行において貸出条件緩和債権として扱われる結果、自社の債務者区分が要管理先になってしまうとの理解によるものです。

しかしながら、金融庁の公表している「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」によれば、元本返済猶予債権(=リスケジュールを行った債権)が直ちに貸出条件緩和債権となるのではなく、元本返済猶予債権のうち、

当該債務者に関する他の貸出金利息、手数料、配当等の収益、担保・保証等による信用リスクの増減、競争上の観点等の当該債務者に対する取引の総合的な採算を勘案して、当該貸出金に対して、基準金利(当該債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出実行利率をいう。)が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていない債権

が、貸出条件緩和債権として考えられるとされています。

つまり、リスケジュールを行った融資先の信用リスク等を勘案し、このリスクに見合った利率(=基準金利)が確保されていれば、その債権は条件緩和債権には該当しないとされているのです。

リスケジュールを申請する融資先は、資金繰りに詰まり、返済はもとより、利息支払いすら困難となっていることが一般的です。

したがって、通常、リスケジュールの申請により、信用リスク、ひいては基準金利は上がります。

リスケジュールでは、元金の返済期間と利率の見直しが行われることとなりますが、ここで、これまでどおりの利率や、それ以下の利率を適用してしまうと、その融資先への貸出金は貸出条件緩和債権となり、その融資先は要管理先以下の債務者区分となってしまうということです。

ただし、逆にいえば、融資先の信用リスク、ひいては基準金利が下がれば、その下がった基準金利までは金利を下げてもその債権は条件緩和債権とならないということです。

信用リスクが下がる要因の例示として、金融検査マニュアルには、

A. 貸出金が、担保や代表者等あるいは信用保証協会の保証により、保全されていること
B. Aに該当しない場合にあっても、代表者等が会社を支援する意思が確認できること
C. 企業の技術力、販売力や成長性等を総合勘案した結果、今後の事業の継続性や収益性の向上に懸念がないと認められること

等が掲げられています。

A. 貸出金が、担保や代表者等あるいは信用保証協会の保証により、保全されていること

代表者等とは、代表者、代表者の家族、親戚、代表者やその家族等が経営する関係企業等当該企業の経営や代表者と密接な関係にある者等をいいます。

会社に返済能力がなくても、担保や保証により、その会社への貸出金の回収が見込まれる場合には、その会社の信用リスクは低いと判断して差し支えないということです。

金融検査マニュアルの事例には、

  • 返済条件の緩和の申し出があった会社につき、保証協会の保証により当該債権の保全がなされており、信用リスクが極めて低いと認められることをもって、この元本返済猶予債権は貸出条件緩和債権に該当しないとした事例
  • 返済条件の緩和の申し出があった会社につき、不動産担保により当該債権の保全がなされており、信用リスクが極めて低いと認められることをもって、この元本返済猶予債権は貸出条件緩和債権に該当しないとした事例

が掲げられています。

B. Aに該当しない場合にあっても、代表者等が会社を支援する意思が確認できること

代表者等が、会社の保証人になっていない場合であっても、確認書や銀行の作成した業務日誌等により、その代表者等に会社支援の意思があることが確認され、かつ、その代表者等の返済資力等の支援能力が充分であると認められる場合には、その会社の信用リスクは低いと判断して差し支えないということです。

金融検査マニュアルの事例には、

  • 返済条件の緩和の申し出があったこと等から、本来であれば破綻懸念先に区分される可能性の高い会社につき、保証人ではないものの、充分な資力を有する代表者の長男の会社支援の意思が確認できたことをもって、要注意先とした事例

が掲げられています。

C. 企業の技術力、販売力や成長性等を総合勘案した結果、今後の事業の継続性や収益性の向上に懸念がないと認められること

企業が業況不振による赤字計上、債務超過等に陥っている場合であっても、その企業の技術力、販売力、経営者の資質やこれらを踏まえた成長性を総合的に勘案した結果、今後の事業の継続性や収益性の向上に懸念がないと認められる場合には、その会社の信用リスクは低いと判断して差し支えないということです。

金融検査マニュアルの事例には、

  • 売上高の大幅な減少、財務内容の悪化に加えて返済条件の変更を行なっているといった事実等から、本来であれば破綻懸念先に区分される可能性の高い会社につき、今まで培ってきた販売ルートの強みを生かした新製品の拡販で今後の収益改善の実現可能性が高いと認められることをもって、要注意先とした事例

が掲げられています。

②融資先から実抜計画または合実計画が提出される

金融庁は、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」において、

実現可能性の高い抜本的な経営再建計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合には、当該経営再建計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない

としています。

銀行にとっても、融資先の債務者区分を下げたくないということは既にご紹介したとおりです。

このため、リスケジュールを申請すると、銀行は、経営再建計画の提出を要求してくることが一般的です。

ここにいう「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」(=実抜計画)とは、

①概ね3年以内に債務者区分が正常先となること
②関係銀行の同意を得られること
③売上等の予想数値が厳しめに設定されていること

を充足する計画をいいます。

しかしながら、中小・零細企業等にあっては、大企業と比較して精緻な経営改善計画等の作成が困難であり、かつこれに基づく経営改善に時間を要することが多いため、下記の緩和措置をもって大企業との取り扱いの平仄が図られることとなっています。

すなわち、中小企業にあっては、金融検査マニュアルにおいて、

債務者が実現可能性の高い抜本的な経営再建計画を策定していない場合であっても、債務者が中小企業であって、かつ、貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に当該経営再建計画を策定する見込みがあるときには、当該債務者に対する貸出金は当該貸出条件の変更を行った日から最長1年間は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない

とされ、ここにいう、「当該経営再建計画を策定する見込みがあるとき」とは、

銀行と債務者との間で合意には至っていないが、債務者の経営再建のための資源等(例えば、売却可能な資産、削減可能な経費、新商品の開発計画、販路拡大の見込み)が存在することを確認でき、かつ、債務者に経営再建計画を策定する意思がある場合をいう

とされています。

つまり、中小企業は、経営再建計画の策定までに、最長で1年の猶予が与えられるということです。

さらに、中小企業にあっては、資産査定管理態勢の確認検査用チェックリスト「自己査定」(別表1)の要件を充足する合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画が策定されている場合には、これを「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」とみなして差し支えないものとされています。

ここにいう、「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」(=合実計画)とは、

①計画期間が概ね5年以内(中小企業の場合、5年を超え概ね10年以内)であること
②計画期間終了後の債務者区分が正常先となること
③全ての取引先銀行において、支援を行うことについて文書その他により確認できること

を充足する計画をいいます。

つまり、中小企業は、実抜計画と比して要件の緩やかな合実計画に従って経営改善に取り組めばよいということです。

結論として、中小企業については、

  • 実抜計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されていること
  • 実抜計画を策定していない場合であっても、貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に実抜計画を策定する見込みがあること
  • 合実計画が策定されていること

等のいずれかの要件を充足すれば、リスケジュールを受けた借入金が、銀行の側で貸出条件緩和債権に該当しないこととなり、結果、要管理先以下の債務者区分となることを免れられるのです。